さぁ、会場に着いたら早速機材の搬入です。

会場のステージの裏に車を乗り付けて雨に濡れないように機材を降ろしました。

ローディングスペースで雨に濡れないのは良いものの、吹き抜ける風が冷たいこと冷たいこと!

みんなでフードをかぶって「さっびぃ~!!!!!」などと言い合う、漫画のひとコマのような状況でした。

絶対にバンドものの漫画ならありそうな場面ですよね。

機材を降ろした次はスタッフと連携してステージ裏まで機材の搬入です。

ホールは学校の体育館の倍ぐらいの広さで明かりが落とされていて、ステージ裏では演奏を終えたバンドが撤収をしていました。

「君たちはこれから始まるバンドの次だよ。」

なかなか良い時間帯に着いたようです。
タイミングよくベースのDemetriも到着です。

前のバンドのサウンドチェックを見ながら会場の様子を見て回りました。

しっかりと組まれた大きくて高いステージ。
ステージ裏にはプロ仕様の電源機材があり、いかつくて頑丈そうな太いケーブルが無数に敷かれています。
照明もしっかりしていて、PAブースもばっちりです。
驚いたことに、ステージ横には大きなスクリーンがあってステージの映像を投影していました。

なんとも贅沢なステージですね。

サウンドチェックも終わったようで前のバンドの演奏が始まりました。

このバンドが終われば自分達の演奏です。

不足している練習時間を取り戻すべく、ステージ裏で譜面を追いながらギターで運指を確認していきました。

気分は試験の合間の休憩時間に参考書を読みあさる受験生といったところでしょうか?

学生の頃、試験勉強はろくにせずに一夜漬けばかりでしたけど、まさかこの歳になってまで一夜漬けで本番に臨むことになるとは思ってもいませんでした。

この時点で、サポートの依頼をうけてから22時間ぐらいでしょうか。

短期集中、付け焼き刃、まるで一日で砦を築き上げた羽柴秀吉かってぐらいのノリです。

みんなもリラックスしながらもそれぞれの準備を淡々と進めていきます。
場慣れしているメンバーというのは何とも頼もしいものですね。
ステージに向けて集中力が高まっていくのがみんなから感じられます。

みんな演奏力のある気のいいメンバー達なのでステージに対する不安というのも無く、一緒にステージに上がるのが楽しみで、自分が崩れさえしなければそれなりのものになることは確実だと思われました。

もしかしたら、何週間もかけて用意してきているという気負いが無い分だけ気楽になっているのかもしれませんし、もしかしたら、それどころではなく20数時間集中状態が維持されているのかもしれませんし、もしかしたら、ステージの大きさに実感が湧かずにいるだけなのかもしれませんが、妙に頭の中がすっきりと静かな状態でした。

さて、前のバンドが終わってついにCanaeバンドの出番です。

親切なスタッフの人達に手伝ってもらってセッティングをすませ、サウンドチェックです。

実は、その日のアンプはDemetriに借りたもので、使ったことの無いものでした。
Fenderのアンプなので大体こんな感じかなぁという予想はできますが、実際に使ってみないと分からないことも多いですよね。

今まで本番での音の設定がうまくいかずに悔しい想いを沢山してきていますから、なんとかそれは避けたいところなのですが、この時点ではもうどうにもなりません。

ある程度の線で妥協してあとは弾き方で対応するしかないかなぁと。

その時に鍵を握るのはモニターです。

モニター環境が悪いと演奏は辛いものになってしまいますが...さぁ、どうなるでしょうか?

!?

なんとも、今まで経験した中でも群を抜いて優れたモニター環境でした!

全てのメンバーの音がきちんと聴こえて、ピッキングのタッチまできちんと把握できるというなんとも贅沢な演奏環境でした。

さすが、これだけのステージを扱うだけはあるなぁと感服しました。

PAの善し悪しは演奏者にとって明暗を分けますからね。

これは本当に安心させてもらいました。

目の前に譜面を開き、走り書きを読んで曲を思い出していきます。

うん、なんとかなるかな♪

さぁ、本番です!!

Canaeちゃんの陽気なMCが始まり、その向こうに落ち着いて構えるベースのDemetri。

ドラマーのカズ君のカウントが始まります。

曲はオリジナルのSmile。

本当はギターイントロからなのですが、今回は急ごしらえでそういう特徴的なパートは対応しきれないので対象外として僕はひたすらバックに回ります。

ドラムとベースのイントロで4小節....さぁ、ギターと歌が入ります!!

バーン!!!!!!

「よしっ、良い感じだ!!」

最初の音はとても大事です。

その1発目がどうなるかで、その後の展開がある程度見えてくるような気がします。

うまく波に乗れた状態で、2曲、3曲と続き、問題のアニソンもそれなりにこなし、出だしの好調を維持したまま演奏は終わりました。

細かいミスはやっぱりあったのですが、その辺りは他のメンバーがフォローしてくれたり、そのまま引っ張っていってくれたりしたので演奏自体が破綻することはありませんでした。

まぁ、アコギなんで適当にガシャガシャっとブラッシングしてしまえばそれっぽく見える部分もありますし、アコギならではの逃げ方も使わせてもらいました。(^^

こういうごまかし方を身につけていくこともステージパフォーマーには大切なことですよね。

お客さん達の拍手の中、僕達の演奏は無事に終わりました。

率先して動いてくれるスタッフ達に搬出を手伝ってもらってステージを降りました。

ここで、依頼を受けてから約23時間。

まだ丸1日経っていないという、なんともかんともハプニングだらけの強行一夜漬けライブの無事終了です。

みんな笑顔で楽しかったね~と盛り上がっていました。

自分はそんなみんなの中で、やっと落ち着いたなぁと一息ついていました。

達成感というよりも安心感という感じでした。

ライブをやりきったとか、そういう感じとは違って、「ふぅ、なんとか役目を果たせたかな。」という感じで、演奏の充実感ではなく責任を果たした喜びと開放感を感じていました。

アコギの演奏はかなり長い間自分の中で大きく劣っている部分になっていたのですが、ここ1~2年の積み重ねでなんとかアコギでもサポートが多少はできるようになってきたのかと感じました。

もちろん、それは良いアンプ、良いモニター環境があったからこそであって、自分1人で手持ちの機材でそれができるかというと、そこはまだまだ十分ではありません。

しかしながら、今後またこういう機会がないとも言い切れませんので、これを次のステップへ繋げていけるように、アコギのサポートの話が急に舞い込んできても対応できるように自分をスタンバイさせておく必要性を感じました。

なんか、ベースだボッサだ作曲だとやることはいっぱいありますが、それが自分のしたいことなのでこればっかりは仕方ありませんね。

ライブ終了直後の盛り上がるみんなを見ながら、この先を見据えつつ日頃の準備って大切だなぁ~とまた一歩演奏者としての心構えが高まったことを感じる日曜日の午後でした。

(もうちょっとだけ続きます)