ゼルダの伝説ブレワイ ブレイク部分の考察

創作活動

Twitterで曲や音源をアップするようになって2年ちょっとが経ちました。

フォロワーさんと音楽やゲームの話で楽しく交流ができるのは自分にとってとても楽しく、ライブ演奏をしなくなった僕にとって音楽活動の場でもあり、情報交換の場にもなっています。

好きなことを通じて交流が持てたり、お互いに役にたつ情報や知識を伝えあったりするのは楽しいものですね。

おかげで僕も音源の質の向上をさせてもらっていますし、僕も何かしらのことで役に立てたら嬉しいです。

まぁ、僕に何ができるかというと、そんなにたいしたことができるわけではないのですが、それでも今まで学んできたことや身につけてきたこと、経験してきたことや失敗談などはありますので、それを同じ趣味の人やこれから羽ばたいていく人に役立ててもらえたら、少しは自分が音楽をしてきた意味もあるかなと、アラフィフのおっさんとしてはちょっとそういうことも思うようになってきました。

音楽を通じて世代を超えてお互いに尊敬しあえる交流が持てるなんて素敵ですね。

そんな間柄のクリエイターさんで、音口あいさんという方がいらっしゃいます。

マニアックな選曲でゲームの曲を取り上げ、各パートをアレンジしてミニキーボードで演奏して多重録音して動画にされています。

音口あいさんの音楽研究所チャンネルはこちら

先日、あいさんから、とある曲について、この効果ってどうやってるんでしょうね?と質問を受けまして、こんな感じでそれっぽくできるんじゃないのかなと解説とサンプルを送ったところ「せっかくなので、これはブログでも紹介してもらえませんか」とのリクエストをいただきました。

そのリクエストにお応えして、このブログでも解説をさせていただきたいと思います。

内容はゼルダの伝説ブレスオブザワイルドのメインテーマにおけるブレイク部分の考察です。

完全に再現できた訳ではありませんが、少しはそれっぽい雰囲気が作れるのではないかと思います。

音源を作ったり曲をアレンジしたりする際、ブレイク部分にちょっと変わった効果を持たせたい時などの参考にしてもらえたらと思います。

ブレスオブザワイルドのメインテーマを聴いて確認

ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド(以下ブレワイ)は2017年にNintendo Switchで発売された大人気ゲームで、皆さんご存知のことと思います。

僕も実況動画で見て、独特なグラフィック、冒険の規模の大きさにこれは凄い時代になってたなぁと思ったものです。

もうPS5が発売されたというのに、僕のゲーム環境は中古のPS3が精一杯。

元ファミコン少年としては最新のゲーム機というのは気になるものですが、音楽製作機材を揃えるのにお金を全振りしていたのでそちらは叶わぬ願いとなっていました。

でも、念願のGodinのギターを買ってそちらはひとまずひと段落したので、僕もSwitchで実際にブレワイを遊んでみたいなぁと思う今日このごろです。

さて、そんなブレワイのメインテーマはこちらです。

話題のブレイクは、この動画の1:05あたりです。

音がピタッと止んで、シュッと一瞬で収束されるような効果がお分かりいただけると思います。

DMでいただいたのは、この部分は一体どうやって再現したらいいのかなということでした。

実際のところはどのように作られているのか僕は知りませんが、このようにしたら似たような感じになるのではないかなと提案させてもらいました。

その方法を以下で解説したいと思います。

音の切り方を考える

ブレイク前の部分を聞いてみると、ストリングスとブラス、そして鈴のようなパーカッションが鳴っているのが確認できます。

ストリングスとブラス、ベルのトラックで検証用に簡単なサンプルを作ってみました。

音の奥行きや空間の広がりを演出するために、トラックには通常リバーブをかけてあります。

僕はLogicを使っていますので他のDAWのことは知りませんが、リバーブは計算が複雑なため同時にたくさんのリバーブを使うと処理が重くなります。

また、同じ空間で演奏して音に統一感や親和性を持たせるために、同じリバーブを複数のトラックにかけたりもします。

処理の負担を軽くしつつも複数のトラックにリバーブをかけるためには、リバーブは外部のトラックに用意し、そこに各トラックから信号を送り、リバーブ成分だけを楽器のトラックに送り返してリバーブ処理を行うのが一般的です。

これによって、立ち上げるリバーブのプラグインの数を減らし、各トラックでリバーブが返る量を調節することでリバーブのかけ具合をコントロールできるようになります。

この動画の下半分のミキサー部分で各トラックに「Bus1」と青く表示されているボタン、その横に円グラフのようなつまみが見えると思います。左から4番目のトラックにBus1とありますが、そのトラックがリバーブのトラックで、円グラフのようなつまみがそのトラックから返ってくるリバーブの量になります。

しかし、この方法では楽器の音が鳴りやんでもリバーブ成分が残り、スパッと音を切ることはできません。

リバーブで作り出した空間の中で音を鳴らして止めている状態なので、楽器自体が鳴りやんでも音が空間内で反響しあってこのような状態になります。

ちなみにリバーブをオフにして再生してみるとこんな感じです。

ストリングス、ブラス、パーカッションのトラックのBus1がオフになっていること、リバーブトラックに信号が入力されていないことが確認できます。

僕が使っている音源はそれ自体にリバーブ成分が若干含まれていたので、リバーブトラックをオフにしても音のキレがスパッとはいきませんでした。

そこで音が鳴り止むタイミングでボリュームがスッと落ちて音が消えるようにボリュームのオートメーションを書いてみました。

リバーブをかけた状態で再生してみると、楽器の音が消えてもリバーブ成分にはオートメーションがかかっていないことが分かります。

これはこのボリュームのオートメーションが各トラックの再生音のみに機能していて、Bus1のリバーブには影響がないことを意味しています。

外部のリバーブのかかり具合を変化させたい場合は、Bus1のリバーブトラックに対してオートメーションを書く必要があります。

しかし、その場合、リバーブのトラックには他のトラックからも信号が来ているので、その他のトラックにかかっているリバーブ成分にも影響が出てしまいます。(実際のアレンジでは他にもトラックがあることを思い浮かべてみてください)

ちなみに、このように複数のトラックの信号をまとめて特定のトラックに送ることをバス処理と呼び、バスにするとか、バスで送るとか言われたりします。

通勤や通学のバスで人がたくさん乗り込んで駅とかに向かいますよね。その乗り合いバスと同じで、たくさんの音の信号をバスに乗せて特定のトラックに送るイメージです。

さて、バストラックにかけたリバーブにオートメーションをかけることができない、かといってリバーブをかけないと音の表現が乏しいとなると、考えられるのはオートメーション用のリバーブのバストラックを別に用意するか、各トラックにリバーブを単体でかけるかということになります。

トラックのオートメーションとバストラックのオートメーションのタイミングを合わせるのは手間なので、今回は単体のリバーブがけでいってみました。

トラックにもともとかかっていたリバーブ成分も同時にスッと消えて、音がスパッと切れたような感じになりました。

それでは、音の広がりや臨場感を足すために各トラックにリバーブをそれぞれ単体でかけてから、音がスッと消えるかどうか試してみましょう。

イメージ通りに音がスッと消えたので、これで良しとします。

この方法でもリバーブが綺麗に切れない場合は、リバーブをかけたトラックをWave形式で書き出してから新規のトラックに読み込み、トラックを任意の長さでカットして不要な部分を削除あるいはミュートするか、トラックの長さを縮めることでスパッとリバーブを含んだトラックの音を切ることができます。

音の要素を考える

これでストリングスとブラスは近い雰囲気になってきました。

あとはブレイク部分のシュッという音をどうするかということになってきます。

もしかしたらDJに特化したプラグインで音がシュッと消えるような効果のものがあるのかもしれませんが、僕はDJ方面のことは知らないのでそちらのことはよく分かりません。

そこで似たような音を重ねる方法で対処することにしました。

シュッという音と似たような音を重ねれば、ちょっと聞いた感じではそれほど大きな違いではなさそうです。

フリーの音源などで似たようなものがあればダウンロードして使うのが良いと思うのですが、それを探すのもなかなか時間がかかる作業です。

何か手頃な方法はないかと何回もブレイク部分を聞いているうちに、何かの音の逆再生に似ている気がしてきました。

僕のようにカセットテープのMTRで多重録音をしていた世代には結構馴染み深い方法なのですが、デジタル世代の人には思いつきにくい方法かもしれません。

楽器の音は一般的に音が鳴り始めてから最高音に達するまでの時間、最高音から通常の音量に戻る時間、通常の音量が維持される時間、減衰していく時間があります。

ブレワイのシュッという音は、音の立ち上がりが早く、かつ減衰音が短く、音域もそれほど高くないので木製のパーカッションのような音を逆再生したものに近い気がしました。

そこで、ドラムセットの中からスネアのリムショットの音を逆再生してみることにしました。

Midiデータのままだと逆再生ができないので、リムショット設定したドラムのトラックをオーディオファイルに書き出します。Logicではリージョンを右クリックして開いたウインドウから「オーディオファイルとして書き出す」で実行できます。

書き出したオーディオファイルを読み込んで、ちゃんと音が鳴るか確かめます。

音が出ることを確認できたら、その音を逆再生させます。Logicではリージョンを右クリックして平いたウインドウから「再生」>「逆再生をオン/オフ」で逆再生ができます。

リージョンが反転して逆再生ができていたら、大まかな位置に調整して再生してみます。

最後にストリングスとブラスのボリュームが徐々に上がって最後にグッと上がるようにオートメーションを書いて終了です。

ブレワイの通りとはいきませんが、この方法でも近い雰囲気は演出できるのではないかと思います。

ストリングスとブラスの音量の下がる時間や下がり方を調節したり、逆再生する音をもっと似たようなものに差し替えるとさらに雰囲気が近づいていくと思います。

シュッという音の探し方のポイントは、アタック(音の立ち上がり)の雰囲気、音域、残響音の長さだと思います。

残響音の部分はボリュームのオートメーションで調節できるので、もしかしたら意外な音を使っているのかもしれません。

逆再生の音はちょっと異次元な感じがするので、何か一味欲しい時に使ってみるのも面白いですし、工夫次第で色々な使い方も考えられると思います。

このような感じで、プラグインに頼らずに持っているもので近い雰囲気を演出するならこういう方法はどうかなという感じでフォロワーさんに提案させていただきました。

TwitterのDM内でのやりとりだったんですけど、もしかしたら同じように悩んでいる人のヒントになるかもしれないからブログで書いてもらいたいとの声をいただきましたので、今回僕のブログで解説をさせていただきました。

もし、また何かの機会でこういうやりとりがあったら、このようにブログで取り上げてみるのも良いかもしれませんね。

あくまでも、これが正解というものではなくて、こうやったら似たような感じになったよというものでしかありませんが、DTMを始めた人には何気ないところが勉強になったりするかもしれませんので、何かしらの役に立てていたら嬉しいです。

それにしても、最近のゲーム音楽は本当にクオリティが高くなりましたね。

僕が学生の頃なんてゲーム音楽を聞いていたら女子に白い目で見られるような状態でしたけど、時代は変わっていくものですね。

ゲーム音楽好きとしては、レトロ系だけでなく最近のゲーム音楽もチェックしていかないとなぁと実感します。

そろそろSwtichを買って自分もゲーマーに復帰かな?

やっぱり聞くだけじゃなくて、実際にその世界の中で冒険してこそ、その音楽の醍醐味が味わえるってものですからね。

ゲームの実況動画を見ているだけだと、実際にプレイした人との音楽に対する思い入れが違うのがよく分かります。

ある曲を聞いてプレイした時の気分やクリアした時の達成感やゲームが終わってしまう時の寂しさを思い出せるのは、実際にプレイした人の特権、その人ならではの体験、ゲームとの思い出です。

僕もそんな思い出を演出できるような曲を描けるようになっていきたいと思います。

そのためにも、Switch買わねば〜。

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